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【毎月勤労統計(2025年10月)から読み解く】
名目賃金上昇と実質賃金マイナスは引き続き継続

概要

2025年12月8日付で、毎月勤労統計調査 令和7年10月分速報が公表されました。
対象は「事業所規模5人以上」で、名目賃金・実質賃金・パートタイム賃金などについて、前年同月比などの変化が報告されています。 以下、注目すべきポイントを整理します。

主なポイント(10月分)

◆名目賃金の増加継続

  • 現金給与総額(事業所規模5人以上)は 300,141円、前年同月比 +2.6% → 46か月連続のプラス。
  • きまって支給する給与 も 292,159円、同じく +2.6%増。
  • 所定内給与 は 271,663円、これも +2.6%。
  • 特別に支払われた給与(賞与など一時金)も +6.7%増。

名目賃金は安定して上昇を続けており、賃上げ傾向は継続中といえます。

◆雇用形態別の状況

  • 一般労働者の現金給与総額は 384,151円(前年同月比 +2.7%)、所定内給与も +2.7%。
  • パートタイム労働者では時間当たり給与(所定内給与ベース)が 1,402円で、前年同月比 +3.3%。

正規・非正規を問わず、賃金上昇が継続。

◆実質賃金は低下:物価高の影響

実質賃金指数(2020年平均=100、持ち家帰属家賃を除く消費者物価指数で実質化)は 82.0(前年同月比 -0.7%)。これで 10か月連続マイナス。

また、消費者物価指数(総合)で実質化した場合でも 83.6、前年同月比 -0.4%。こちらも 3か月連続のマイナス。

参考として、当月の消費者物価指数(持ち家帰属家賃を除く総合)の前年同月比は +3.4%。

名目賃金は上がっていても、物価上昇ペースに賃金の伸びが追いついておらず、「実質」では購買力が低下している点に注意。

社労士が注目すべき観点

  • 賃金水準の把握・賃金制度見直しのタイミング検討

    名目賃金は上昇が続いているものの、実質賃金は引き続きマイナス。企業においては名目だけでなく、実質ベースの「社員が実感する賃金」も踏まえた賃金制度の見直し提案が求められます。

  • 物価動向を踏まえた支援・相談対応

    物価高が続く中で、賃上げはしているにもかかわらず実質賃金低下により、従業員が生活実感とのギャップを感じている可能性が高いです。事務所として、顧問先に対し「実質賃金」や「生活実感」に配慮した助言が重要です。

  • 長期賃金トレンドとの整合性確認

    46か月にわたる名目賃金のプラスが継続しているが、実質賃金のマイナスも継続している。今後、どこで転換するか、あるいは実質賃金改善が見られるか注視してください。

まとめ

  • 名目賃金は上昇継続 — 企業の賃金改定や手当見直しの流れが反映されている可能性。
  • ただし実質賃金は10か月連続のマイナス — 物価上昇による実質所得の目減りが懸念。
  • パートタイムの時給改善 — 非正規雇用者の待遇改善が一部進んでいるとみられるが、インフレの勢い次第では実態は苦しい可能性も。

2025年10月の毎月勤労統計速報では、「名目賃金は上昇継続」「ただし実質賃金は10か月連続のマイナス」がポイントです。物価高が続くなか、単に名目を基準にした賃上げ・賃金制度ではなく、実質賃金の購買力や従業員の生活実感を視野に入れた支援・助言が、社労士としてますます重要になっています。

参考リンク