トップ
労働施策推進法等が改正されました!~カスハラ・就活セクハラ対策が「義...
労働施策推進法等が改正されました!
~カスハラ・就活セクハラ対策が「義務化」へ!~
令和7年6月11日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正法)が公布されました。本改正は、多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図ることを目的とし、ハラスメント対策の強化、女性活躍推進法の有効期限の延長を含む女性活躍の推進、および治療と仕事の両立支援の推進といった重要な措置を講じるものです。社労士として、これらの改正内容を深く理解し、顧問先への適切なアドバイスに活かしていくことが求められます。
1. ハラスメント対策の強化
今回の改正では、職場のハラスメント対策が大きく強化され、特にカスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントへの事業主の義務が明確化されました。
◆カスタマーハラスメント対策の義務化
- 定義: カスタマーハラスメントとは、「①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境を害すること」を指します。
- 事業主の義務: 事業主は、顧客等からの言動によって労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。
- 具体的な措置: 事業主が講ずべき具体的な措置の内容は、今後指針において示される予定ですが、現時点では以下の項目が挙げられています。
- 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発。
- 相談体制の整備・周知。
- 発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置。例えば、相談への対応や被害者への謝罪などが含まれます。
- 他社の労働者への協力: 自社の労働者が取引先等の他社の労働者に対してカスタマーハラスメントを行った場合、その取引先等の事業主が事実確認等の措置を講じる際に協力が求められた際は、事業主はこれに応じるよう努めるものとされています。
- 関係者の責務: 国、事業主、労働者、顧客等(カスタマーハラスメントのみ)の責務も明確化され、例えば顧客等は労働者に対する言動が就業環境を害することのないよう注意を払う努力義務があります。
◆求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化
- 対象: 求職者等(就職活動中の学生やインターンシップ生等)に対しても、セクシュアルハラスメントを防止するための必要な措置を講じることが事業主の義務となります。
- 具体的な措置: こちらも具体的な措置内容は今後指針で示される予定ですが、カスタマーハラスメントと同様に「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発(例:面談等を行う際のルールをあらかじめ定めておくこと等)」、「相談体制の整備・周知」、「発生後の迅速かつ適切な対応(例:相談への対応、被害者への謝罪等)」などが考えられます。
- 関係者の責務: 国、事業主、労働者の責務が明確化されます。
◆国の啓発活動の強化
- 改正法では、国の責務として、職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて国民の規範意識を醸成するために、啓発活動を行う旨が定められました。
2. 女性活躍推進法の改正
女性の職業生活における活躍をさらに推進するための改正も行われます。
◆情報公表の必須項目の拡大
- 対象企業の拡大: これまで従業員数301人以上の企業に公表が義務付けられていた「男女間賃金差異」について、101人以上の企業にも公表義務が拡大されます。
- 新たな義務項目: 新たに「女性管理職比率」についても101人以上の企業に公表が義務付けられます。
- 施行日: これらの情報公表の義務化は、令和8年(2026年)4月1日から施行されます。
- 従業員数100人以下の企業は努力義務の対象です。
◆プラチナえるぼし認定要件の追加
- 女性活躍推進に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度であるプラチナえるぼし認定の要件に、事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していることが追加されます。
- 既に認定を受けている企業も、認定維持のためにこの要件を満たす必要がありますが、今後の省令等の整備において猶予が設けられる予定です。
◆女性の健康上の特性への配慮の明確化
- 女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の健康上の特性(月経、更年期等に伴う就業上の課題)に配慮して行われるべき旨が、基本原則において明確化されました。今後、企業の取組例を示し、積極的な取組が促される予定です。
3. 治療と仕事の両立支援の推進
多様な働き方を支援するため、治療と仕事の両立支援も強化されます。
- 事業主の努力義務: 事業主に対し、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によって症状が増悪することを防止し、その治療と就業との両立を支援するため、相談に応じ、適切に対応するための体制整備その他の必要な措置を講じる努力義務が課されます。
- 施行日: この努力義務は令和8年(2026年)4月1日から施行されます。
4. 施行期日と今後の展望
改正法は、公布の日(令和7年6月11日)から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される事項が多いですが、一部事項には個別の施行日が定められています。
◆公布の日から施行される事項
- 職場におけるハラスメントに関する国の啓発活動の義務。
- 女性活躍推進に関する基本原則への女性の健康上の特性の追加。
- 女性活躍推進に関する基本方針へのハラスメント対策の記載事項の追加。
- 女性活躍推進法の有効期限の10年間延長。
◆令和8年(2026年)4月1日から施行される事項
- 治療と就業の両立支援に関する事業主の努力義務。
- 情報公表の必須項目の拡大(男女間賃金差異、女性管理職比率)。
今後の政省令等の整備において、具体的な措置の内容や運用に関する指針が示される予定です。社労士として、これらの詳細な情報に引き続き注視し、顧問先企業が改正法に適切に対応できるよう、先んじて情報提供や体制整備のサポートを行っていくことが重要です。
5. 企業・職場への影響
| 項目 |
事業主への義務化/努力義務 |
対象範囲 |
| カスハラ対策 |
義務 |
全業種 |
| 求職者対応 |
義務 |
採用面接等 |
| 治療支援 |
努力義務 |
病気・治療中の労働者 |
| 情報公表 |
義務 |
従業員100名超企業 |
| 女性活躍支援 |
指針整備・報告義務 |
女性の健康配慮も対象 |
義務化項目は違反時の是正指導など行政対応の対象に。
努力義務でも、企業の対応が社会的評価に直結し、就労環境改善に繋がります。
参考リンク