トップ パート従業員の社会保険料を企業が肩代わりする特例(2026年10月開始)

2026年10月からの3年間限定でパート従業員の社会保険料を
企業が肩代わりする特例を検討

厚生労働省は、2026年10月から3年間の時限措置として、パート従業員の社会保険料負担を企業が肩代わりする特例を導入する方向で調整を進めています。

特例の背景と目的

この特例措置は、パート従業員が社会保険の適用拡大により「年収の壁」を意識して就業調整を行うことを防ぐためのものです。現在、健康保険組合では組合規約を通じて、被保険者の負担を軽減する特例を認めていますが、厚生年金保険では同様の仕組みが存在しません。そこで、被用者保険の適用拡大に伴う収入減少を回避するため、企業が労使合意のもとで被保険者の保険料負担を軽減し、事業主負担の割合を増やすことを認める特例の導入が検討されています。

特例の具体的な内容

  • 対象者: 被用者保険の適用拡大により「年収の壁」を意識する可能性がある者。
  • 対象標準報酬月額: 12.6万円以下。
  • 公平性の確保: 企業内で同一の等級に属する者同士の本人負担割合を揃える。
  • 適用範囲: 本人負担割合は労使合意のもとで設定可能であり、賞与にも適用可能。

賛成・反対意見

賛成
  • 「年収の壁」による就業調整を抑制し、人手不足の解消につながる。
  • 健康保険組合の特例を参考にすることで、現行制度と整合性を取れる。
  • 労使折半の原則を維持しつつ、任意の仕組みとして柔軟性を持たせることが可能。
反対・慎重意見
  • 公的年金制度の労使折半原則を崩し、企業に個別の保険料負担を委ねることへの違和感。
  • 中小企業が十分に活用できない可能性があり、大企業との待遇格差を助長する恐れ。
  • 被保険者の負担軽減と事業主の増加が表裏一体であり、企業規模による利用格差が生じる可能性。
  • 制度の詳細(財源や環境整備)が不透明であり、実施の影響が不明確。

今後の検討課題

本特例については、賛成意見が多いものの、制度の細部に関しては意見がまとまっていません。肩代わりした保険料の還付割合を8割ではなく全額にする、パートの労働時間や賃金を増やした企業への助成金拡充など、中小企業の負担軽減策や、特例の持続可能性に関する議論なども必要と思われます。

政府は、社会保障審議会年金部会での意見を踏まえ、具体的な制度案の検討を進めていく方針です。

詳細情報(参考リンク)

詳しくは、厚生労働省の「第24回社会保障審議会年金部会」の資料1P17〜19あたりをご参照ください。

資料1 社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)