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令和7年「賃金引上げ実態調査」結果公表
〜平均引上げ率4.4%、4年連続の上昇〜

厚生労働省は、2025(令和7)年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。

本調査は、全国の民間企業(常用労働者100人以上)3,643社を対象に、賃金改定や賞与の実施状況などを把握するために実施されたものです(有効回答率50.7%)。本調査によると、賃金を引き上げた企業は全体の9割超に上りました。1人あたりの平均引上げ額は 13,601円、引上げ率は 4.4% と、前年を上回り4年連続の上昇です。特に、建設業や製造業では5%を超える伸びを記録。背景には、人材確保のための賃上げや、企業業績の改善があります。

また、定期昇給制度を持つ企業は8割以上、そのうち6割近くがベースアップ(ベア)を実施しています。賃上げの決定要因としては、「企業の業績」が最も多く、次いで「労働力の確保・定着」が挙げられました。日本全体で、持続的な賃上げの流れが定着しつつあるようです。

賃金を引き上げた企業は9割超

令和7年中に「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は 91.5% に達し、前年(91.2%)をわずかに上回りました。 一方で「引き下げた・引き下げる」企業は1.1%、「改定なし」は2.4%でした。 労働組合の有無でみると、

労働組合の有無 割合
労働組合あり 95.5%(前年97.9%)
労働組合なし 90.4%(前年89.0%)

と、組合のある企業の方が高い実施率を示しました 令和7年賃金引上げ実態調査概況 。

平均引上げ額は13,601円、引上げ率は4.4%

「1人平均賃金の改定額」は 13,601円(前年11,961円)、 「改定率」は 4.4%(前年4.1%) となり、4年連続の上昇です。 労働組合のある企業では 4.8%、組合のない企業では 4.0% と差が見られました。 業種別では、建設業(5.9%) や 製造業(5.2%) が高い伸びを示しています。 この水準は、平成23(2011)年以降で最高水準に近い結果となっています 令和7年賃金引上げ実態調査概況 。

図表ページ6参照:改定額・改定率の推移グラフ

定期昇給制度のある企業は8割超

「定期昇給制度(定昇)あり」と回答した企業は 81.2%。 内容としては「業績や能力評価による昇給」を採用する企業が多く、72.4% に上りました。 「自動昇給のみ」とする企業は 27.5% にとどまっています。 また、定昇制度のある企業のうち 76.8% が実際に定昇を実施しています 令和7年賃金引上げ実態調査概況 。

ベースアップ(ベア)実施企業は約6割に

定昇制度のある企業のうち、「ベースアップを行った・行う」とした企業は 57.8%。 前年を上回り、賃金水準の底上げが広がっています。 労働組合ありでは 82.1% に達し、ベアの動きが顕著です 令和7年賃金引上げ実態調査概況 。

賃上げの決定要因:「企業業績」が4割超で最多

賃金改定の際に「最も重視した要素」としては、

決定要因 割合
企業の業績 41.7%(前年 35.2%)
労働力の確保・定着 17.0%
雇用の維持 11.9%

が上位となりました。 企業の好業績を背景に、従業員定着を意識した賃上げが進んでいることがうかがえます 令和7年賃金引上げ実態調査概況 。

夏の賞与「支給した・する」企業は88.4%

夏のボーナスについては、支給済みまたは支給予定(額決定済み) の企業が 88.4% と高水準を維持。 前年(88.1%)からわずかに上昇しています 令和7年賃金引上げ実態調査概況 。

まとめ

2025年調査では、企業の賃金引上げ率・実施率ともに過去最高水準となり、 「定昇+ベア」を併せた賃上げの流れが定着しつつあります。 背景には、人材確保競争の激化 や 業績回復、物価上昇対応 などがあり、 労務管理においても今後「持続的な賃上げ構造」をどう築くかが課題となりそうです。

出典