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労災保険制度の見直し論点整理(遺族補償・消滅時効) ~第120回労働...
労災保険制度の見直し論点整理(遺族補償・消滅時効)
~第120回労働政策審議会労働条件分科会の資料を読み解く!~
労働者災害補償保険制度における遺族補償年金、消滅時効等に係る給付基礎日額の取り扱いについて、現在、制度の具体的課題に関する専門的な議論が進められています。厚生労働省の審議会資料に基づき、労災保険制度における最新の見直し論点を整理しました。現時点で見直しが確定しているわけではありませんが、今後改正される可能性があることを把握していることは社労士の皆様にとって有益だと考えられます。以下で顧問先への情報提供の際に役立つポイントを簡潔に紹介します。
1. 遺族補償年金の支給要件:夫と妻の格差が課題に【見直し検討中】
現行制度の問題点
- 妻は年齢制限なしで受給可能(生計維持要件あり)。
- 夫は55歳以上または一定の障害がなければ受給できない。
特別加算の扱いにも格差
- 受給資格者となる遺族が妻のみの場合で、55歳以上または障害状態にあり、かつ、生計を同じくする他の受給資格者がいない場合に22日分の特別加算(175日分)がある。
- 夫など、妻以外の単身遺族にはこの加算はなし【不公平との指摘】。
検討の方向性
- 支給要件の性差は「合理的理由を見出しにくく、解消が適当」とされており、夫への制限撤廃が有力。
- 特別加算については配偶者以外にも対象を広げるかどうか、さらなる議論が必要とされている。
2. 消滅時効期間の見直し:2年→延長の必要性は?
現行制度
- 休業(補償)等給付、療養の費用、介護(補償)等給付、葬祭料等の請求権:2年
- 障害補償給付・遺族補償給付等の請求権:5年
現行の時効期間の見直しについての意見
【延長に前向き】
- 精神疾患など発症時に業務起因性の判断が難しいケースに配慮すべき。
- 民法、労基法では賃金請求権が5年に延長されており、労災給付も同様に見直すべき。
【慎重派】
- 被害者の早期の権利実現を目指すべきであり、相談援助や周知等の運用改善で対応すべき。
- 健康保険や雇用保険でも受給者側から請求が必要な給付はあり、時効は2年間で統一されているところ、仮に見直すのであれば制度横断的に検討する必要がある。
3. データで見る実態
- 遺族(補償)等年金受給者の約88%が妻。高齢化も進み、70歳以上が75%超。
- 受給額は被災者が男性の場合に平均約191万円/年、女性の場合は約124万円/年と格差あり。
参考リンク(厚生労働省)