トップ 「高額療養費制度」見直しへ—専門委員会で本格議論進む

「高額療養費制度」見直しへ—専門委員会で本格議論進む

2025年9月16日、厚生労働省は「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」の第4回会合を開催し、今後の制度の持続可能性をめぐる議論が行われました。患者側からは高額療養費制度はセーフティーネットであるとして引き上げに慎重な姿勢が示されました。一方で、保険者及び医療関係者側からは医療費の急増や保険財政の逼迫等財政面で懸念が示されました。専門委員会は、「丁寧に国民の声を聞き、制度の持続性と公平性を両立できる設計を目指す」とし、秋までに方針を決定する予定としています。高額療養費制度の改正は、国民生活に大きな影響を与えるため引き続き動向に注意が必要です。

患者・保険者・医療関係者の声を集約

この委員会は、社会保障審議会医療保険部会の下に設置されたもので、患者団体や保険者、医療関係者、労使団体の代表ら13名の委員で構成されている。委員会では5月から4回にわたり、各関係者からのヒアリングや意見交換を実施し、制度の現状と課題について多角的に検討が進められてきた。

「制度は命綱」―患者側から制度維持を強く要望

患者団体からは、高額な薬剤費が家計を圧迫し、「制度の見直しが治療中断や命に直結する」との強い懸念の声が相次いだ。慢性疾患や希少疾病を抱える患者にとって、高額療養費制度は生涯にわたる治療を支える重要なセーフティネットとなっている、他方で、諸外国と比べても、このような恵まれている制度を擁している国はほとんどなく、その点を今一度自覚することが必要との意見もあった。

財源の逼迫と制度持続性を巡る懸念—保険者・医療者側の視点

一方、保険者や医療関係者からは、医療費の急増と保険財政の悪化を背景に、制度の見直しを求める声が上がった。特に医療の高度化と高額医薬品の普及により、「制度がこのままでは持たない」とする現場の危機感が強まっている。 「応能負担の徹底」「高齢者と現役世代のバランス」「費用対効果の分析強化」など、全体的な医療保険制度の改革とリンクした議論が必要だとの意見も出されている。

自己負担限度額の見直しに焦点

現在、高額療養費制度では所得に応じて自己負担限度額が設定されており、医療費が一定額を超えると払い戻しが受けられる仕組みとなっている。例えば、年収370〜770万円の70歳未満の人では、月の自己負担上限は、治療内容によるが、約80,000円程度に設定されている。 これまでの議論を踏まえると、高額療養費制度の検討にあたっては、以下の点で更なる議論が必要とされている。

  • 現行制度でも医療費負担が重いとの指摘がある一方で、制度の持続性や現役世代の負担への配慮から、低所得者や長期療養者への配慮を前提に、一定の負担見直しが必要
  • 自己負担限度額の引き上げにより、多数回該当に該当しなくなり、逆に負担が急増する恐れがあるため、年間上限の導入などの制度的配慮が必要
  • 以前は一旦自己負担分(3割分)を支払った上で、その後に償還される制度であったため、どの程度の医療費か患者自身も自覚していたが、現物給付化されたことによって、自身の医療費全体が見えにくいといった課題に対する、運用面での改善
    など

年末にかけて最終報告と方針決定へ

専門委員会は、「丁寧に国民の声を聞き、制度の持続性と公平性を両立できる設計を目指す」とし、秋までに方針を決定する予定としています。

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