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日・オーストリア社会保障協定が本年12月1日に発効します!
~これを機に少し社会保障協定に触れてみませんか?~

9月10日、日・オーストリア社会保障協定(令和6年1月19日署名)の効力発生のための外交上の公文の交換(これをもって、「締結」となります)がオーストリア共和国の首都ウィーンで行われました。これにより、この協定は12月1日に効力を生ずることとなります。

※社労士の皆様にとっては、社会保障協定が実務で必要になることは少なく、試験勉強で少し触れた程度かと思いますが、顧問先で社会保障協定による適用証明書の発行等が必要になった場合に備えて、これを機会に参照してみてください。

  1. 現在、日・オーストリア両国の企業等からそれぞれ相手国に一時的に派遣される被用者等には、日・オーストリア両国で年金制度等への加入が義務付けられているため、年金保険料の二重払い等が生じています。この協定は、このような問題を解決することを目的としており、この協定の規定により、派遣期間が5年以内の見込みの一時派遣被用者等は、原則として、派遣元国の年金制度等にのみ加入することとなります。また、両国での保険期間を通算して、それぞれの国における年金の受給権を確立できることができます。
  2. 日・オーストリア社会保障協定は、我が国にとって24番目の社会保障協定となります。
【参考】
  • 在オーストリア邦人数: 1,338名(外務省「海外在留邦人数調査統計(令和6年10月1日現在)」)
  • 在留オーストリア人数: 515名(出入国在留管理庁「在留外国人統計(令和6年12月現在)」)

社会保障協定とは?

国際間の人的移動に伴う課題

国際的に人が移動して働く場合、日本から外国へ派遣されて働く人や、外国から日本へ派遣されて働く人には次のような問題があります。

  1. 保険料の二重払い
    派遣されても自分の国の年金制度に加入を続けることが多いため、自国と相手国の両方の公的年金制度に保険料を払わなければならない場合があります。
  2. 年金を受け取るための加入期間が足りない
    多くの国では、老齢年金をもらうために一定期間その国の年金制度に加入している必要があります。しかし短期間だけ相手国で働いても、その国の必要な加入年数を満たせないことが多く、そのままでは年金を受け取る資格が得られません。

これらの問題を解決するため、日本は他国と「社会保障協定」を結んでいます。主な内容は次の二つです。

(1)適用調整
相手国への派遣が5年以内であれば、派遣中は自国の年金制度だけに加入し、相手国の制度への加入は免除されます。5年を超える場合は相手国の制度が適用されます。

(2)保険期間の通算
日本と相手国それぞれの年金制度に加入した期間を合算し、年金受給に必要な最低加入期間を満たせば、それぞれの国から加入期間に応じた年金を受け取れるようにします。

このように、社会保障協定は「二重払いの防止」と「年金受給資格の確保」を目的としています。

社会保障協定の締結状況

日本から協定を結んでいる国で働く場合の手続き

被用者が一時的に協定相手国に派遣される場合の手続き

一時的に日本から協定相手国に派遣され就労する人が、協定相手国の社会保障制度への加入が免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を受ける必要があります。日本での事業主が年金事務所に申請手続きを行います。詳しくは「適用証明書交付申請書の提出先はどこですか」をご確認ください。

具体的な手続きは、以下の(1)~(3)のとおりです。

(1)事業主は年金事務所に「適用証明書交付申請書」を提出してください(おおむね6カ月前から提出が可能)。

(2)審査の結果、申請が認められた場合には、適用証明書を交付します。

(3)派遣された被保険者は、協定相手国内の事業所に適用証明書を提出してください。協定相手国の当局により相手国実施機関に提示または提出を求められた時、また協定相手国の社会保障制度に加入していない理由を尋ねられた時には、適用証明書を提示または提出してください。

当初の一時派遣期間の予定を延長して協定相手国で就労する必要が生じた場合は、日本の事業主は、年金事務所に「適用証明書期間継続・延長申請書」を提出してください。両国関係機関間での協議の結果、延長申請が認められた場合には、新しい適用証明書が交付されます。

意外と知られていない制度:厚生年金保険特例加入制度

日本から協定締結国に派遣されている者の派遣期間が5年を超えた場合は、相手国制度の免除期間の延長が認められた場合を除き、日本の厚生年金を資格喪失し相手国の年金制度に加入することになります。一方で、老後は日本で過ごす可能性が高い等で日本の年金制度に引き続き加入したいというニーズもあります。

そのような場合は、日本年金機構に申請することで厚生年金に任意加入することができます(社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律第25条)。

※この場合は相手国制度の免除はありませんので、両方の保険料を支払う必要があります。

参考リンク