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厚生労働省が「父親の仕事と育児両立読本(令和6年度)」を公表しました...
厚生労働省が「父親の仕事と育児両立読本(令和6年度)」を
公表しました!~「働き盛り」と「子育て盛り」は同時進行~
厚生労働省が、「父親の仕事と育児両立読本」を公開しました。本資料は、男性の育児参加を促進し、育児と仕事の両立を支援するための包括的な情報を提供しています。具体的には、給付金、取得条件などの育児休業制度の詳細、関連する法改正情報、そして企業や個人が直面する課題とそれらを克服するための対話の重要性について解説されています。さらに、実際に育児休業を取得した男性たちの体験談を通じて、育児が個人の生活やキャリアに与える好影響、夫婦間での協力や効率的な働き方の工夫が示されています。また、女性労働者への支援制度や地域の育児支援サービスも網羅されており、育児に関わる全ての人が利用できるリソースが紹介されています。以下、概要を紹介します。
男性育休をめぐる法制度と経済的支援
男性の育児休業取得を後押しするため、法制度も柔軟化され、経済的支援も拡充されています。
◆ 産後パパ育休(出生時育児休業)の柔軟な取得
- 子の出生直後に取得できる休業で、分割して2回取得が可能です。
- 有期雇用社員も、特定の要件を満たせば取得できます。
- 会社に制度がない場合でも、育児休業の要件を満たしていれば取得可能であり、妻が専業主婦や育児休業中でも男性が育休を取得できます。
- 産後パパ育休中は、労使協定の締結、就業日数等の上限(休業期間中の所定労働日・時間の半分、開始・終了日は所定労働時間未満)、開始予定日前日までの合意があれば、一部就業が可能となり、長期休業への不安を軽減できます。
◆ 育児休業給付金
- 雇用保険の被保険者が育児休業を取得した場合、原則として休業開始時の賃金の67%(育児休業開始から181日目以降は50%)が支給されます。この給付金は非課税です。
- 手続きは原則として会社が行い、2か月に1回ハローワークへ申請します。
◆ 社会保険料の免除
- 育児休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は、被保険者負担分および事業主負担分ともに免除されます(子が3歳に達するまで)。年金額の計算においては、保険料が納付されたものとして取り扱われます。
◆ 出生後休業支援給付金(2025年4月1日施行)
- 両親がともに子の出生直後の一定期間(14日以上)に育児休業を取得する場合、28日間を限定として、育児休業給付に上乗せして休業開始前賃金の13%が支給されます。
◆ パパ・ママ育休プラス
- 夫婦ともに育休を取得すると、同時取得でも交代取得でもこの特例の対象となり、休業期間を子どもが1歳2か月になるまで延長できます。
◆ 男性の育休等取得状況の公表義務
- 法律により、事業主による男性の育休取得状況の公表が義務付けられています。これは厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」や自社ホームページなどで行われます。
- 公表は、求職者の関心や投資家の関心を高め、企業の優秀な人材獲得にも繋がると期待されます。単なる数字の表示にとどまらず、企業の目指す価値やユニークな取り組みを発信することで、より効果的な対話のきっかけとなります。
◆ 個別の意向聴取・配慮の義務(2025年4月1日施行)
- 労働者やその配偶者が妊娠・出産を申し出た場合、企業は、勤務時間帯や勤務地、両立支援制度の利用期間、労働条件の見直しなどについて、労働者の意向を個別に聴取し、配慮することが義務付けられます。
◆ ハラスメント防止措置
- 育児休業や妊娠・出産に関するハラスメントを防止するための措置を講じることが、育児・介護休業法や男女雇用機会均等法により事業主に義務付けられています。社内での問題解決が難しい場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談も可能です。
◆ 柔軟な働き方を支える制度の拡充
- 子の看護等休暇: 小学校3年生終了までの子を持つ従業員は、年5日(2人以上なら年10日)まで、時間単位でも取得できます。
- 所定外労働の制限(残業免除): 小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、所定労働時間を超えて労働させてはなりません。
- 短時間勤務制度: 3歳に満たない子を養育する労働者に対しては、原則として1日6時間の短時間勤務やテレワークの措置を設けなければなりません。
- 柔軟な働き方を実現するための措置(2025年4月1日施行): 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、「始業時刻等の変更」「テレワーク等の措置」「保育施設の設置運営等」「養育両立支援休暇の付与」「短時間勤務制度」の中から2つ以上の措置を講じることが義務付けられます。
◆ 円滑な育休取得のための業務体制と企業風土
- 育休取得に伴う職場への影響を軽減するため、業務の属人化を防ぎ、共通のスケジュール帳やWebツールを活用した情報共有体制を普段から構築しておくことが重要です。
- 育休取得者と職場の上司や同僚、取引先との綿密な対話を通じて、休業中の仕事の見直しや引き継ぎを円滑に進めることが不可欠です。
- 人事部からの積極的な声かけや、上司が育休取得を快く受け入れるポジティブな企業風土は、社員が安心して育休を取得する上で極めて重要です。収入面での不安に対しては、給与や給付金のシミュレーションを提供することも有効です。
男性育休がもたらす企業と個人のメリット
男性の育児休業取得は、個人だけでなく企業全体にも多大なメリットをもたらします。
◆ 社員のスキルアップとエンゲージメント向上
- 育児と仕事を両立する中で、社員のタイムマネジメント能力や計画性が向上します。
- 子どもに伝える経験を通じて、他者への丁寧なコミュニケーション能力が向上する事例も報告されています。
- 育休取得を通じて育児の大変さを実感し、夫婦の協力体制が強化されることで、仕事と家庭のバランスへの意識が高まり、復帰後の業務効率化にも繋がります。
- 企業が育児を支援する姿勢を示すことで、社員の会社へのエンゲージメント(愛着)やロイヤルティ(忠誠心)が高まります。
◆ 優秀な人材の獲得と定着
- 男性育休取得への積極的な取り組みは、企業の魅力を高め、多様な働き方を求める優秀な人材を引きつけ、定着させる上で強力な要素となります。
- 育休を経験した社員が社内でその経験を共有することで、他の社員の育休取得を後押しし、育休取得率の向上にも貢献します。
◆ 組織の活性化と生産性向上
- 業務の属人化を防ぎ、スムーズな引き継ぎを可能にする体制は、組織全体のレジリエンス(回復力)を高めます。
- 社員が家庭での役割を充実させることで、心身ともに健康な状態で仕事に取り組むことができ、生産性の向上にも繋がります。
- 育休取得者が増えることは一時的に労働力が減ることを意味しますが、それを乗り越えるための仕組みづくりは、結果的に組織のチームワークを強化し、相互支援の文化を醸成します。
男性育休の推進は、単なる法遵守に留まらず、企業の競争力を高め、持続可能な成長を実現するための重要な経営戦略です。「家庭に父親の代わりはいない」という認識のもと、企業が積極的に男性の育休取得を支援し、社員が育児経験を仕事にも活かせる環境を整えることが、今後の企業経営において不可欠となるでしょう。
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