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「労災保険制度の在り方に関する研究会中間報告書」が公表されました!

労災保険制度の最新動向と社労士業務への示唆

この度、厚生労働省の「労災保険制度の在り方に関する研究会」が中間報告書を取りまとめました。本稿では、同報告書の内容を基に、労災保険制度の現状と今後の見直し論点について解説し、社労士業務への示唆を提供いたします。早ければ26年の労働者災害補償保険法の改正を目指すとされていますので、ロウカレでも引き続き動向を注視してまいります。

1.適用関係の見直し議論

研究会では、労働基準法上の「労働者」以外への適用拡大が議論されました。

  • 特別加入制度の拡充:業務の実態や災害の発生状況から労働者に準じて保護すべき者に対し、特別加入制度が設けられています。特に、特定フリーランス事業が対象に追加されたことで、フリーランスは広く特別加入の対象となりました 。研究会では、特別加入団体の承認要件や取消し要件を法令上に明記することが適当であるとの意見で一致しました 。
  • 労働者以外の就業者への強制適用:フリーランスや個人事業主への強制適用については、労災保険の社会保障的性格を強調し強制加入も検討し得るとの賛成意見と、慎重に検討すべきとの反対意見に分かれ、今後の議論の余地があるとしています 。
  • 家事使用人への適用:現在、労災保険の強制適用外である家事使用人について、仮に労働基準法が適用される場合には、労災保険法も強制適用することが適当であるという意見が概ね一致 しました 。ただし、保険料負担や手続きに係る事務負担軽減などの課題も指摘されています 。
  • 暫定任意適用事業の今後:農林水産業のうち小規模な個人経営の事業である暫定任意適用事業についても、強制適用すべきとの方向性で意見が一致 しました 。

2. 給付関係の再検討

  • 遺族(補償)等年金:夫と妻の支給要件に存在する差異について、男女の就労状況や家族の在り方が変化していることを踏まえ、差異は解消すべきという点で意見が一致 し、夫に課せられた年齢要件を撤廃することが適当であるとの意見が大宗を占めています
  • 遅発性疾病に係る保険給付の給付基礎日額:有害業務従事から疾病発症までに長期間を要する「遅発性疾病」の場合、原則として発症時の賃金を給付基礎日額とし、その額がばく露時の賃金に満たない場合はばく露時の賃金を算定基礎とする方法が適当であるとの意見が概ね一致 しました 。
  • 社会復帰促進等事業の処分性と保険給付化:労災保険制度の「社会復帰促進等事業」のうち、特別支給金を含め、給付的な事業については処分性を認めることが適当との意見で一致しました 。また、不服申立て手続きを労審法の対象とすることも適当とされています 。

3. 徴収関係の議論

  • メリット制の意義と今後の運用:事業主の災害防止努力を促進する「メリット制」について、一定の災害防止効果があることについて概ね一致しました 。特定疾病の除外など、算定対象については引き続き議論が必要です 。
  • 事業主への情報提供の必要性:メリット制の対象となる事業場において労災保険率が増減することを踏まえ、保険料を負担する事業主に対し、給付の支給決定(不支給決定)の事実を知らせることは重要であるとの点で意見が一致しました 。

4. まとめ

今回の研究会中間報告書は、労災保険制度が直面する多岐にわたる課題に対し、活発な議論が交わされたことを示しています。多様な働き方への対応、給付のあり方、徴収制度の公平性、情報公開の促進など、いずれの論点も今後の法改正や制度運用に大きな影響を与える可能性があります。

特に、フリーランスや家事使用人など、従来の「労働者」概念に収まらない働き方への対応は、社労士として注目すべき分野の一つです。特別加入制度の拡充や、将来的には強制適用の議論が進む可能性もあり、これらの新しい労働形態に対する労災リスクの管理、保険料負担のあり方、さらには給付申請サポートにおいて、社労士の専門知識と役割がますます重要となるでしょう。

また、遺族補償年金の男女間格差の解消や遅発性疾病の給付基礎日額の算定方法の見直しは、被災労働者とその遺族の生活保障に直結する重要な変更点です。社労士はこれらの変更を正確に把握し、適切なアドバイスを提供することで、被災者支援の質を向上させることが求められます。

本中間報告書は「中間報告」としての位置づけであり、多くの論点については引き続き専門的な見地からの議論が求められています。社労士の皆様には、これらの議論の動向を注視し、制度改正の動きにいち早く対応できるよう、常に最新の情報を更新し続けることが肝要です。

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