トップ 従業員のリスキリングを支援する「教育訓練休暇給付金」制度の活用と留意点

従業員のリスキリングを支援する
「教育訓練休暇給付金」制度の活用と留意点

1.制度の概要

教育訓練休暇給付金は、雇用保険の一般被保険者が、離職することなく教育訓練に専念するために自発的に無給の長期休暇(30日以上)を取得した場合、失業給付に相当する生活保障として支給される給付金制度です。

これは、労働者のキャリア形成やリスキリングを後押しする制度であり、制度整備と正確な手続きが求められます。なお、業務命令による受講は対象外である点に留意が必要です。

2. 支給対象となる休暇と条件

◆ 休暇の要件

◆ 労働者の要件

3.受給額と期間

◆ 所定給付日数(加入期間により異なる)

雇用保険加入期間 給付日数
5年以上10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

◆ 給付日額の算定

  • 休暇開始日前6か月の平均賃金日額を基に算定(失業給付と同様)
  • 年齢や加入期間に応じて変動
  • 給付期間は休暇開始日から1年間(複数回に分割して取得した場合も給付可能)

4.事業主・労働者の手続の流れ

4-1.事業主の対応事項

  • 就業規則または労働協約等に規定して、そのことを周知する。
  • 労働者から教育訓練休暇の取得について申出があった場合、調整のうえ合意する。合意後、労働者から提出された教育訓練休暇取得確認票に必要事項を記載する。
  • 教育訓練休暇開始日から10日以内に、賃金月額証明書等をハローワークに提出する。
  • ハローワークから受領した申請書類を労働者に交付する。

注意:解雇予定者への適用、虚偽申請は罰則対象。教育訓練給付金と混同しないこと。

4-2.労働者の対応事項

  • 教育訓練休暇の取得について合意した後、教育訓練休暇取得確認票を事業主に提出する。
  • 30日ごとに認定申告書をハローワークへ提出する。
  • 教育訓練の受講証明等も必要となる。

5.実務上の注意点・Q&A

質問 回答
Q1. 業務命令で受講させた場合は対象になりますか? 対象外です。 自発的取得が要件です。
Q2. 無給であることが必要だが、手当などは含まれるか? 受講費用や受験料の補助は可。 ただし、労働の対価と認められる場合は支給対象外。
Q3. 教育訓練中に出勤・副業をした場合は? 当該日の給付は不可。 連続30日間無給である必要があります。
Q4. 解雇予定の労働者に取得させたら? 給付対象外となり、助成金全体の停止や罰則の適用を受ける可能性があります。
Q5. 受給期間を過ぎたら? 支給不可。 出産・育児・傷病等で取得不能だった場合は延長の相談が可能。

6.制度導入に関する社労士の支援ポイント

  • 就業規則整備の支援:教育訓練休暇制度の条文案作成
  • 制度運用フローの策定:労使合意の確認票作成、申請手続のマニュアル化
  • 助成金(人材開発支援助成金)との連携アドバイス
  • ハローワークとの事前相談支援(制度適合の確認)

7.参考リンク・資料

社労士としては、法令遵守の確認・社内制度の整備・適正な申請フローの構築を通じて、事業主と労働者双方が安心して教育訓練に取り組める体制づくりを支援することが重要です。制度の活用と助成金の連携により、人材開発と職場定着を強力にサポートしていきましょう。