労働安全衛生規則の改正は、近年増加傾向にある職場での熱中症による労働災害、特に死亡災害を防止するために行われました。職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数(以下合わせて「死傷者数」という。)は、2024年に1,257人と、死傷者数について統計を取り始めた2005年以降、最多となっています。熱中症による死亡災害の多くは、初期症状の放置や対応の遅れが原因とされており、重症化を防ぐための対策が重要視されています。当該改正は令和7年6月1日より労働安全衛生規則の一部を改正する省令(以下「改正省令」)が施行されました。
本稿では改正省令のポイントについて解説します。
熱中症による死亡災害の多くは、初期症状の放置や対応の遅れが原因とされています。このため、改正省令では、熱中症による健康障害の疑いがある者の早期発見と重篤化の防止を目的として、事業者が講ずべき措置に関する新たな規定が設けられました。
具体的な改正の主なポイントは以下の2点です。
今回の労働安全衛生規則の改正により、職場における熱中症対策は、これまでの「努力義務」から、事業者に対する具体的な「義務」へと明確に強化されました。熱中症による労働災害は、適切な対策によって防ぐことが可能です。
社労士の皆様には、この改正の趣旨と内容を深く理解し、顧問先企業が法令に則った適切な体制整備と措置の実施を行えるよう、具体的な助言と指導を積極的に行っていただくことが期待されます。これにより、労働者の安全と健康が守られ、安心して働ける職場環境の実現に貢献できるでしょう。