2025年(令和7年)7月、新たに創設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」は、いわゆる“年収の壁”を意識せず働ける環境整備を目的としたキャリアアップ助成金の新メニューです。人手不足解消と非正規雇用労働者の処遇改善の両立を目指す企業にとって、大きな後押しとなる支援制度です。
これまでの政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」により、「106万円の壁」への対応策として、社会保険適用時処遇改善コース(令和5年10月開始)を実施してきました。
しかし、いわゆる「130万円の壁」についても、手取りの減少による働き控えの解消が課題となっており、壁を意識せず働くことのできる環境づくりへの支援が求められていました。この状況を踏まえ、令和7年2月25日の自民・公明・維新の三党合意に基づき、キャリアアップ助成金による措置を拡充することが決定されました。
新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」は、現行の「社会保険適用時処遇改善コース」の「労働時間延長メニュー」の要件や助成額を見直し・拡充したものです。現行の社会保険適用時処遇改善コース(手当等支給メニュー、労働時間延長メニュー、併用メニュー)は令和7年度末まで引き続き実施され、新コースは令和7年7月1日から並行して実施されます。
事業主は対象労働者の働き方の希望を踏まえ、いずれかのコースを選択できますが、令和8年度以降は「短時間労働者労働時間延長支援コース」の活用が推奨されています。なお、既に社会保険適用時処遇改善コースの計画届を提出している場合は、本コースの計画届・変更届の提出は不要です。
本コースの対象となるのは、次の条件を満たす短時間労働者です。
また、申請事業主は以下の条件を満たす雇用保険適用事業所の事業主が対象です。
延長時間 | 賃金増加要件 | 小規模企業 | 中小企業 | 大企業 |
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5時間以上 | 不問 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
4時間以上5時間未満 | 5%以上 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
3時間以上4時間未満 | 10%以上 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
2時間以上3時間未満 | 15%以上 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
取組内容 | 小規模企業 | 中小企業 | 大企業 |
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労働時間をさらに2時間以上延長 | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
基本給を5%以上増額 | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
昇給、賞与、退職金制度のいずれかを新たに適用 | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
※最大で1人当たり75万円の助成が受けられます。
※複数年にかけて段階的に取組を進める場合も対象です。
「社会保険適用時処遇改善コース」の労働時間延長メニューや併用メニューで既に取組中の場合でも、要件を満たせば本コースに切り替えて申請することが可能です。すでに提出済みのキャリアアップ計画書はそのまま活用できるため、負担も最小限に抑えられます。