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労働安全衛生法が改正へ
フリーランス・高齢者対応や実務影響を整理

2025年の施行を見据え、労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律案が2025年6月、衆議院で可決されました。本改正は、働き方の多様化や高齢化といった社会変化に対応し、より幅広い働き手の安全と健康を守ることを目的としています。社労士事務所としても、顧問先企業に対して周知・支援が求められる重要な改正です。

改正の背景と目的

近年、建設業やIT業界を中心に個人事業者(フリーランス)や高年齢労働者の就労が増加しています。一方で、従来の労働安全衛生法では、これらの人々に対する安全衛生対策が十分ではありませんでした。本改正では、これまで保護の対象外だったフリーランスや、小規模事業場のメンタルヘルス対策、高齢者向けの災害防止などが新たに制度化されます。

改正のポイントと実務影響

  1. フリーランス等の個人事業者への保護拡大

    混在作業現場において、発注者に対し、フリーランスを含む作業者への災害防止措置(安全計画、安全教育等)を義務付け。また、個人事業者にも一定の自己責任(災害報告、安全配慮)を課します。顧問先には、契約書や現場ルールの整備が必要となります。

  2. ストレスチェック制度の義務化拡大

    従来は労働者50人以上の事業場に限定されていたストレスチェック制度が、50人未満の小規模事業場にも義務化されます(2025年施行予定)。社労士としては、ツールの選定、実施フローの設計、結果の活用体制について、企業への助言が重要になります。

  3. 化学物質による健康障害防止の強化

    化学物質を譲渡する際の危険有害性情報の提供が義務化され、違反時には罰則が科されます。また、成分名が営業秘密である場合も、代替情報提供が必要です。SDS(安全データシート)の整備・更新が求められます。

  4. 高年齢労働者の労災防止対策

    転倒や重作業など、高齢者に特有のリスクへの対応を明文化。作業環境や労務管理の再点検が必要です。安全教育や配置の見直しが実務対応のカギになります。

  5. 登録検査機関の活用と規制強化

    クレーンやボイラーなどの安全検査体制を効率化・強化するため、民間登録機関の範囲を拡大。不正防止のためのガバナンス強化も図られます。

今後のスケジュールと対応

本改正法は2025年5月に公布され、今後、各項目ごとに段階的な施行が予定されています。多くの改正点には経過措置が設けられており、事業者が適切に対応できるよう準備期間が設けられます。企業に対する事前の情報提供と対応準備が必要不可欠です。社労士としては、顧問先に向けたチェックリストの作成、安全衛生教育の実施支援、制度整備のサポートを積極的に行っていくことが求められる可能性があります。