トップ 2025年9月・毎月勤労統計:給与上昇も物価高で実質賃金は減少

2025年9月・毎月勤労統計:給与上昇も物価高で実質賃金は減少

毎月勤労統計調査は、雇用、給与及び労働時間について変動を毎月明らかにすることを目的とした調査です。この調査は、常用労働者5人以上の事業所を対象とし、毎月の賃金・労働時間・雇用の変動を把握するものです。

景気動向の判断や、政策・企業の賃金・労働条件の参考資料として広く使われます。今回の対象事業所数は 32,673 事業所、回答事業所数は 25,256 事業所で、回収率は 77.3%でした。本年9月の確報が公表されましたので概要を紹介します。

2025年9月の賃金 ― 名目賃金の上昇

  • 事業所規模5人以上の「現金給与総額」は平均 297,787 円で、前年同月比で +2.1% の上昇
  • 「きまって支給する給与」は 288,543 円(+2.0%)、「所定内給与」は 269,277 円(+2.0%)となっています。
  • 雇用形態別では:
    • 一般労働者の平均現金給与総額は 382,717円(前年比 +2.6%)
    • パートタイム労働者の平均は 109,782円(前年比 +2.0%)、所定内給与は 106,081 円(+2.1%)で、所定内時間当たり給与は 1,388円(+2.8%)となっています。

総じて、名目賃金は「所定給与」「特別給与ともに上昇」。パートタイムも含め、幅広く賃金が上向いた月となりました。

購買力でみると ― 実質賃金は低下

  • ただし、賃金の「実質的な価値」を示す実質賃金指数(基準年 2020年=100)でみると、以下のように下振れしています。
指標 実質賃金指数 前年同月比
消費者物価指数(持家帰属家賃除く総合)で実質化 81.9 ▲1.3%
消費者物価指数(総合)で実質化 83.5 ▲0.7%
  • 背景には、消費者物価の上昇(前年同月比 +3%前後)があります。つまり、名目上の給与は上がったもののの、物価上昇がそれを上回ったため、実質賃金はマイナスとなりました。

賃金の「額面」は上がったものの、「購買力」で見ると低下。給与アップが必ずしも実感につながっていない可能性を示唆しています。

パートタイム給与・構成の変化

パートタイム労働者の給与、特に所定内時間あたり賃金は 1,388 円(前年比 +2.8%)と上昇。

これにより、働く時間あたりの時給水準の改善がみられます — ただし物価上昇が続いているため、やはり実質賃金の観点では注意が必要です。

なぜこの統計が重要か

この統計は、国内における「賃金」「雇用」「労働時間」の月次の動きをとらえる重要な指標で、企業の賃金政策や労政を考えるうえでの基礎データとなります。 最近のように物価上昇が続く時期には、「名目賃金の上昇」だけでなく「実質賃金(購買力)の変化」をあわせてみることが、家計や企業経営の判断において非常に重要です。

まとめ

  • 名目賃金は上向き — 企業の賃金改定や手当見直しの流れが反映されている可能性。
  • しかし、実質賃金はマイナス — 物価上昇による実質所得の目減りが懸念。
  • パートタイムの時給改善 — 非正規雇用者の待遇改善が一部進んでいるとみられるが、インフレの勢い次第では実態は苦しい可能性も。
  • このような “賃金 ↔ 物価” の動きは、今後の企業の賃金政策、家計の実収入、ひいては消費や景気全体にも影響する重要な要素。

2025年9月の毎月勤労統計では、名目では賃金が上昇し、特にパートタイムの時給改善がみられた一方、物価上昇によって実質賃金は低下しました。名目だけでなく、購買力ベースでの給与の実質水準もあわせて確認することが重要です。