高齢化や高額薬剤の普及に伴う医療費増大の中で、現役世代の負担に配慮しつつセーフティネット機能を将来にわたり堅持するため、高額療養費制度の見直しが専門委員会で議論されており、現在までに8回の検討会が開催されています。今回提示した取りまとめ案が大筋で了承され、今後詳細を固めたうえで、26年夏以降に順次施行する方針です。
2025年12月8日に公表された「第7回専門委員会資料(案)」と、12月15日に公表された「第8回専門委員会資料(案)」を比較すると、基本的な骨子は維持されつつも、前回の議論を踏まえた加筆・修正が数カ所見られます。
主な相違点は以下の通りです。
新たに設けられる患者負担の「年間上限」について、12月8日時点では「年に1回以上、現在の限度額に該当した方」を対象とする案が示されていました。 一方、12月15日の資料ではこれに加え、「高額療養費の限度額に該当しない方も含めて制度の対象とすることも検討すべきである」という文言が追加されました。これにより、月ごとの限度額には届かないものの、年間を通じて負担が重い層も救済対象になり得る可能性が示唆されています。
12月15日の資料では、新たに「多数回該当(頻回利用)」のカウントに関する記述が追加されました。現行制度では転職などで加入する保険者が変わるとカウントがリセットされますが、「実務的な課題もあるものの、カウントが引き継がれる仕組みの実現に向けた検討を進めていくべきである」との文言が明記されました。これは12月8日の資料にはなかった項目です。
70歳以上の外来特例の見直しについて、12月8日時点でも慎重論への言及はありましたが、12月15日の資料では具体的に「限度額の段階的な見直しなどの丁寧な対応が必要ではないか」という記述が追加され、激変緩和措置の必要性がより強調されています。
特定疾病(血友病や人工透析など)の特例について、12月8日資料では「検討が必要という指摘があった」と簡潔に記載されていました。 12月15日の資料では、これが「増大する医療費負担を全体としてどう考えていくかという大きな視点で、今後とも継続的に検討していくべき課題であるが」という前置きが加わり、より長期的・包括的な視点で議論すべきテーマであるという文脈が補強されています。
12月15日の資料は、8日の案をベースにしつつ、「年間上限の対象拡大」「保険者間の通算」「段階的な移行措置」といった、患者の負担軽減や制度の公平性に配慮した具体的な意見が反映された内容となっています。
| 所得区分名 | 窓口負担割合 (75歳以上) | 対象者の目安(単身世帯の年収) | 75歳以上の加入者割合 |
|---|---|---|---|
| 現役並み所得者 | 3割 | 年収 約383万円~ | 約7% |
| 一般Ⅱ | 2割 | 年収 約200万円~約383万円 | 約20% |
| 一般Ⅰ | 1割 | 年収 ~約200万円 | 約31% |
| 低所得Ⅱ | 1割 | 住民税非課税世帯 (年収 約80万円~) | 約26% |
| 低所得Ⅰ | 1割 | 住民税非課税世帯 (年収 ~約80万円) | 約16% |